環境変動部門・地球変動講座 大野研究室

研究の概要

地磁気(古地磁気学・考古地磁気学)

古地磁気学

 これまでにわかってきた地球の磁場のもっともダイナミックな現象は地磁気の逆転です。過去には地球の磁場が逆転していた(つまり方位磁石のN極が、今とは反対に南を指すような磁場があった)時期があったことが判っており、最も最近の逆転は78万年前に起きています。ところで地球の磁場の観測は大航海時代にはじまりました。たった4百年間しか記録が無いのです。それより前の地球の磁場のことはどうやって調べるのでしょうか?それが古地磁気学です。岩石の中には微弱な磁性を持った鉱物が含まれており、その磁石を調べることで岩石が出来たときの地球の磁場を知ることができます。

さて地磁気の逆転はどのようにして起きるのでしょうか? 我々は深海掘削試料の分析から258万年前に起きた地磁気逆転を詳細に調べています。(写真:深海掘削調査船JOIDES RESOLUTION号、2005年、アゾレス諸島)


 古地磁気学研究の大きな目的は昔の地球の磁場変動を調べることです。また、古地磁気学で明らかになった地球磁場変動から、地球の磁場が作られているしくみ(地磁気ダイナモ)についての研究が進められます。そしてその他にもいろいろな研究に役に立っています。まず、地磁気の逆転の歴史は、未知の試料の年代決定に役立ちます。さらに、方位磁石が常に北か南を指すことは、過去の大地の動きを復元する研究(プレートテクトニクス)に応用できます。

 特に遺跡のかまど跡や土器などを対象にした研究を考古地磁気学と呼びます。考古地磁気学では、磁場の方向や強度の変動を使って年代が未知の遺跡の年代決定を行ったり、当時の生活様式の推定なども行われています。


最近の論文から
・Yu Kitahara, Yuhji Yamamoto, Masao Ohno, 他、 Archeointensity estimates of a tenth-century kiln: first application of the Tsunakawa–Shaw paleointensity method to archeological relics, Earth, Planets and Space, 2018.
・北原 優, 山本 裕二, 田尻 義了, 大野 正夫, 畠山 唯達, 下津令遺跡 (西柿ノ木地区) における考古地磁気学的研究, 発掘調査報告書『下津令遺跡3 (西柿ノ木地区・毛無尾地区) 』, 山口県埋蔵文化財センター, 2016.
・Ohno,M.他, "Detailed paleomagnetic record between 2.1 and 2.75 Ma at IODP Site U1314 in the North Atlantic: geomagnetic excursions and the Gauss-Matuyama transition", Geophys. Geochem. Geosyst., 2012.

写真(左)仲島遺跡(大野城市)における竈跡の考古地磁気測定用試料の採取の様子。(右)超電導岩石磁気磁力計での試料の測定。
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