■マジャンに教わった昔話のうち、印象に残ったものを紹介します。

一人の主人と、太陽と雨と死


 昔ひとりの主人と、他に3人の人がいた。それらの名前は誰か?太陽と雨と死。全部で3人だった。彼らはある主人の家を訪ねたいと思った。

 太陽が一番最初に主人の家を訪ねた。

太陽が戸をたたくと、主人は訊ねた。「おまえは誰だ?」

「太陽です。」

「私は戸を開けない。おまえはある場所には顔を出して照らすが、また別の場所では顔を出さないではないか?おまえはうそつきだ。」

そこで太陽は帰っていった。

 次に雨がやってきて戸をたたいた。

「おまえは誰だ?」

「雨です。」

そこで主人は言った。「おまえは雨を降らす場所を選ぶではないか?おまえはうそつきだ。私は戸を開けないぞ。」

雨も去っていった。

 最後にやってきたのは誰か?そう、死だった。主人の家に着くと、戸をたたいた。主人はやはり訊ねた。

「おまえは誰だ?」

「死です。」

 すると、主人は答えた。

「よかろう、おまえを中に入れよう!おまえはうそつきじゃない。おまえは老人とか若者とか、男とか少女とか女房とか、醜いとか美しいとか言って物事を選んだりしない。だから私はおまえを中に入れよう。さあ、入りなさい!おまえはうそつきなんかじゃない・・・・。」


豹と兎の話


 昔々のある日のこと、豹が森へ出かけていって、獲物をとった。そして家に持って帰ろうと歩いていった。さて、道の途中に、兎が木の板根の陰に隠れていた。そして豹が来ると、こう尋ねた。

「おまえは誰だい?」

豹は「俺は豹だ」と答えた。

すると兎は「何を運んでいるんだい?」と尋ねた。

豹は「肉を運んでいるのさ」と答えた。

そこで兎は、豹に向かって言った。「そこに置いていけ!もしそうしなければ、こうだぞ、こうだぞ!」

そしてあの長い耳をにょきにょきと板根の陰から出してみせた。豹はそれを見て、肉を放り出して逃げていった。

 そんなことがあって、豹は再び森に戻ってきた。そして、獲物をとった。家に帰る途中、またこの間の兎がいて、豹に尋ねた。

「そこのおまえは、誰だ?」

「俺は豹だ」

「ところで何を運んでいるんだ?」

「肉を運んでいるのさ」

すると兎は言った。「そこに置いてけ」

豹は肉を置いて、家に逃げ帰った。 それから毎日、豹は兎に獲物をまきあげられることになった。

 ある日、ライオンが豹の家にやってきた。そして、ライオンは豹に尋ねた。

「全くおまえは、何をそんなに逃げ帰ってくるんだ?」

豹は答えて言った。「森で獲物をとって、帰ってこようとすると、道のわきの木の根っこのところにへんなものがあるんだ。こっちのほうにやってきて、『おまえは誰だ?』と尋ねるのさ。俺が『豹だよ』と言ったら、『何を運んでいる』というので、『肉だよ』と言うと、『そこにおいてけ。そうしなければ、こうだぞ、こうだぞ!』といって、こんなに長い耳を持ち上げるのだ!」

そこでライオンは言った。「よしわかった。一緒に森に行ってみようか。そいつを、俺に見せてみろ」 豹は言った。

「よし」

そして、そろって森に行った。

獲物をしとめて、帰る途中、また陰から「おまえは誰だ?」と尋ねる者があった。

豹は言った。「俺は豹だよ」

「何を運んでいる?」

「肉だ」

「そこに置いて行け!でないと、こうだぞ、こうだぞ・・」いつものように、耳を持ち上げた。

そのときライオンがとびだして、耳を加えて引っぱり出した。兎が姿をあらわすと、豹は激怒した。豹は嘆いた。「ああなんてこった!こんなちびすけに恐れおののいていたなんて!!」

 それからは、今度は獲物を家に持って帰ることができた。


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