■Yanomamo プロローグと第一章■
 

プロローグ
 

・ヤノマミ:

ベネズエラとブラジルの国境地帯に居住、人口2万人、200-250ほどの分散的な村落に住む。近年まで外部世界から孤立、戦争や政治的統治のネイティブ・パターンを維持してきた。現在、外部世界と未接触の村は少数残存するのみ。;本書はヤノマミとその統治に関する1964年以来の60ヶ月のフィールドワークにもとづく。
 

・ルワヒワの殺害事件のエピソード:

ビサーティ・テリはより大きな村、パタノワ・テリの分村で(p167の地図)、南に数キロ歩くと隣村コナブマ・テリに至る。ビサーティ・テリの人びとは村内の不和によって母村から分離し、コナブマ・テリと同盟関係を結ぶことを考えた。ビサーティ・テリとコナブマ・テリは1940年代から交易を開始した。しかし、こうして両村の交流が少しずつ発展している間に、ビサーティ・テリの子どもが何人も連続して死に、それがコナブマ・テリの邪術のせいだとされた。こうして、ビサーティ・テリはコナブマ・テリをひそかに敵とみなすことになった。コナブマ・テリの男ルワヒワがビサーティ・テリを交易のために訪れた際、村の壮年男性マミキニニワが彼を殺害。(→ここから2村の戦争状態がはじまった。戦争は15年後 Chagnonがはじめて村を訪れた際も、継続していた。→)パタノワ・テリは復讐のため、ビサーティ・テリと同盟関係にある第3の村に協力を依頼。さらに第4の村の男たちに待ち伏せをさせた上で、第3の村の饗宴にビサーティ・テリの男女(子供も含む)大勢を招待させた。なごやかな饗宴の後で、招かれたビサーティ・テリの男女がハンモックでリラックスしているところに、何ものかが合図を送り、襲撃が始まった。棍棒と弓矢で攻撃を受けて何人かはその場で即死、別の者たちはやっとの思いで村外に逃亡した。しかし、さらに逃げる男たちに、森の中から弓矢の雨がそそがれた。10人以上の男はその場で殺害され、多くの女性はとらえられて二度と家族のもとには帰らなかった。ビサーティ・テリの男たちは、怪我の回復を待って北方のマヘコド・テリに避難した(1951年のこと)。さらに1年後に、マヘコド・テリを去ってオリノコの下流に新しい村をつくる。Chagnonが調査を開始したのは、この村である。


・このフィールド入りする15年前のエピソードの教訓:

 
(1)一つの村をみるだけでは社会組織の理解にはいたらない

(2)過去の出来事や歴史を知らなければ、現在観察されるパターンを把握することはできない。
 
 


 
 

第一章:ヤノマミでフィールドワークをする
 
 

<ビネット>

ヤノマミの主生業は焼畑(プランテン)、採集、狩猟。円形の村落(40〜50人の小さなものから、300人に達するものまで)をつくる。村の中はオープンで、ほとんどプライバシーはない。性事は畑の中や夜間に。寿命は短く、村内の子どもの割合は常に多い。大きな河の流域は避け、河間平原に住む「足の人びと」(cf: 「河の人」)。→このため、大河流域にやってくる外部者との接触は少なかった。果物が成熟する時期に村を離れて、旅をする。;雨季は低地ジャングルを水浸しにし、乾季は他村への訪問の季節。饗宴、交易、同盟のための交渉とともに、戦争の季節。戦争はヤノマミの社会組織、集落パターン、日常生活をすべて規定し、決して「儀礼的戦争」などではない。調査している間、少なくとも成人男性の4分の1は戦いが原因で死んでいる。;社会生活は部族原理によって組織。ヘッドマンが村を統率、平和維持活動をするが、同時に戦争をするかどうかを決める。しばしばヘッドマンは勇壮な戦士でもあり、獰猛waiteriという風評を持っている。;結婚は同盟を結ぶための女性の交換という意味が強い。女性はつねに不足気味(若年層の男女比のアンバランス、一夫多妻に起因)→村内の戦いの多くは女性の奪い合い、姦通など→これがしばしば村落の分裂をもたらす。;ヤノマミの戦いには段階がある(胸たたき→棍棒の戦い→致死的な戦い)。自村を有利に導くために同盟を結ぶが、同盟相手はしばしば裏切り、敵に変わる。これらを的確に見抜いて適切な判断をくだすためのヘッドマンの洞察力が要求される。
 
 

<フィールドにおけるデータ収集>

60ヶ月の調査をへての関心:

文化の形成における攻撃性の果たす役割の重要性。日常的な妻への暴力、胸たたきの決闘、待ち伏せ殺人による敵の村の侵略。ある村は、初期の15ヶ月の調査の期間中、25回もの侵略をうけた。ヤノマミが定期的な戦争状態にあったという事実は、神話、儀礼、集落パターン、政治行為、通婚などにあらわれている。
・一番長い日:村入りの経緯

・いかに彼らはあなたを受け入れるか

・ジャングルでの生活:オートミール、ピーナツバター、シラミ

執拗な物乞い行為にどう対応したのか


・ヤノマミの系譜と出生の歴史を収集する

ヤノマミ調査の目的:系譜、出生、婚姻行動、親族、集落パターン、移住、政治に関する情報のシステマティックな収集。;系譜調査の困難(名前のタブー)
・婚入者のタフガイ、レレバワと組む
婚入者から情報を得ることのメリットに気づく。
系譜調査の危険:死者の名を呼ぶことの危険性。


・カオバワ:ビサーティ・テリのヘッドマンが調査の補助を志願する

系譜の調査を開始してから1年して、ビサーティ・テリのヘッドマン、カオバワが調査を手伝ってくれることになった。比較的温厚で、正確な記憶の持ち主。

<ヘッドマンのさまざまなタイプ>

(1)穏和で静か、ふだんは目立たないが非常に有能で、彼らが何かすると人びとは従う。
(2)残虐、独裁的、押しが強く、派手で、周囲の人びとに対して意地が悪い。叱責したり、妻を打ったり、弱いものいじめをする。暴力的。
 
*ほとんどは両タイプのスペクトラム上に位置し、カオバワは(1)の極に位置するタイプ。
*カオバワの親族関係:5人の兄弟が村内にいる。また隣村に5人の平行イトコがいてサポート。また多くの姉妹が村内で婚出しており、8歳の娘は婚約させていた→獰猛性を誇示しなくても立場を維持できる。しかし若い頃は勇猛さをはせたという。
*若いレレバワはこれに対して、「獰猛な男性」の典型。

 

<ビサーティ・テリをこえて遠く離れた村々へ>

・生起する科学的問題

村のサイズ、村の系譜構成、性・年齢比、生態学的・地理学的変数、婚姻による紐帯と同盟→因果関係の存在。戦争は、村のサイズや分布の拘束因である。


・ファースト・コンタクトのエピソード

Shamatari:ビサーティ・テリの南方の諸村落。複雑な同盟・敵対関係。未コンタクトのシャマタリを訪問するエピソード。殺害される危険。同行したインフォーマントがボートで帰ってしまい、大変な目にあう。自作のカヌーをつくってなんとか、ビサーティ・テリに帰り着く。