3/Myth and CosmosP99~P119) 2002/5/29 本田佳奈

THE SPRITUAL ENVIOMENT (P99)

 ヤノマミの精神文化は比較的素朴である。それと対照的にかれらのコスモス、魂、神話世界、現世は、土着の正統性や基準の制約があるものの、豊かで精巧な広がりをもつ。彼らは他にはまねのできない独特な方法で精神世界とつながっている。文字を持たない彼らは詩や語りによってそれを表現する。彼らの語彙数はわれわれより少ないが、日常用いる語彙は豊富で我々のそれよりも使用頻度が高い。ヤノマミがよく言う“I posses the truth.(私は真実を持っている。)”は真実味を帯びている。彼らは多様な語彙をもちいて、すばらしい話、コスモスの歴史物語、人の居場所について語る。

 

The Cosmos(p99~p102) 

コスモスは4層のひっくり返したディナー・プレートのようなものから成る。この領域以外の場所では不思議なことがおこる。各々の層の端っこは腐っているので歩くと危ない。ちょうど457年ほど前マゼラン達が海の果てに至ると落っこちると危ぶんだのと同じである。

p100-9第1層(DUKU KA MISI)

原始の状態。「老いた女」と表現される、空っぽの何も生み出さない土地。かつては色々なものがあったのだが、すべて下層へと降りてしまった。神話や日常生活にはあまり重要な役割を占めていない。

p100-18第2層 死後の世界(HEDU KA MISI)

 Heduの上の部分は現世の人の「空」であり肉眼では見えない。樹木、ガーデン、村落、動物、植物、死んだ人間の魂が在る。現世と同じ世界であり、死者は生前とかわらない生活をしている。Heduの裏の部分は肉眼でも見える。星や惑星はここに突き刺さっており、何人かのヤノマミは現世の夜空の星はHeduの川を泳ぐ魚と考える。シャグノンは「飛行機に乗ったとき、Heduの世界に突っ込んで置きざりにされないのか?」とよく聞かれた。

P101-8第3層 現世(HEI KA MISI)

 heduから塊が落ちてきたため、層には穴が空いている。ジャングル、河川、丘、動物、植物、ガーデンなどがある。“ヤノマミ以外の人々”(ヤノマミによく似ているが堕落し、おかしな言葉、ヤノマミにとっての方言を話す)もいる。外国人もこれに該当し、彼らもまたシャボノに住んでいると考えられている。

P101-24第4層 HEI TA BEBI

ここのamahi_teriは、もともと3層の現世(HEI KA MISI)にあった。しかし2層(死後の世界・HEDU)の一部分が3層を突き破ったとき、4層に落ちてきた。amahi_teriの人々はガーデンがなく狩りもできないため、人を食べるようになった。一つ上の層(HEI KA MISI・現世)に魂を送っては、子供の魂を盗んできて食べる。彼らの襲撃をふせぐことはシャーマンの重要な仕事であり、常に闘っている。

 ヤノマミの人々はカニバリズムを病的に恐れる。単に毛嫌いしているのではなく、人間に内在し、非常に現実的におこりうる行為として抵抗を示す。ある日シャグノンはバクの肉を血の滴るようなミディアムで食べようとした。すると人々はそれを直視できず、「おまえはジャガーのように生の人肉を食べたいのか」と非難した。彼らは釘を打てるくらい硬くなるまで火を通す。

 amahi_teri は最初の人類No badabo(半人・半精霊・半動物)の時代に生きていた。No badaboが今の人に変わっていった過程は伝説でよく語られる。宇宙観や伝説の発生は人の発生と繋がっている。

 

MythsThe Beginning of Time and the No Badabo(p102~p105)

「宇宙はそこにいた人が生みだした」

No badabo は最初の人類であったと同時に宇宙を生み出した。No badaboはあらゆる動物や植物の名を持つ精霊でもあり、その伝説や伝承はおもしろくユーモアに満ちている。語り手は時には幻覚剤に陶酔しながら、創世の伝承を生き生きと語り、観客を楽しませる。そのため少々飛躍が過ぎ、話の筋が変わってしまうこともある。

p102-30口承文化の映像記録

シャグノンはティモシー・アッシュとともにヤノマミの語りの世界を映像記録。

ヤノマミの話のユーモアと機微を知るには映像で記録する必要がある。

p103-13性とNo Badaboの伝承

 性はヤノマミの伝承に密接にかかわる。またユーモア、中傷、喧嘩、物語など人間にかかわるものはすべて性的な事柄を中心に回る。そのため多彩な性的表現の語彙がある。

P103-33人の誕生「月の血のはなし」

 我々にとってのアダムとイブや最初の人類は近親相姦風である。しかしヤノマミの場合は人の誕生における男女の関係についても十分に熟考されており、近親相姦で人が増えていったのではなく、男女は別々に生まれ(男が先=優位。しかし男女一緒に生まれたという解釈もある。)繁栄したということになっている。

「“月の血(時の始まり)”の話

先祖の一人が月を弓で打った。月から血が滴り落ち、男がうまれた(本質的にどう猛=WAITERI)となった。血の滴りがたくさん溜まった所の男達はどう猛で戦闘では皆殺し状態になる。血が水で薄まった所から生まれたのはややおだやかな性格である。」

ヤノマミの人々はシャグノンが先祖のことをしつこく聞くとよくこう言った。

「ああ!そんな人たちはみんな“月の血”のころに生きていたよ!」

p104-38女の誕生

「男たちが森でブドウを摘みにでかけると、ブドウに開いたばかりの 開いたwabuの実がくっついていた。ブドウが女になり、むらに持ち帰った。女は次々に村の男たちの子(女の子)を産み、ヤノマミが増えていった。」

 

Jaguar Myths (p105-11~p111-5)

ヤノマミの伝承によく現れるテーマは人間とジャガーの関係である。

人を殺して食べる。人のように森で狩りをし、人を襲う数少ない動物の一つ。畏怖させる恐ろしい動物。人間と似ていながら非なるもの。

P105-18森のもの(urihi t rimo)と村のもの(yahi ta rimo
 
ヤノマミには森のもの(urihi t rimo)と村のもの(yahi ta rimo)という考え方がある。

村のものである家畜やペットを食べることはカニバリズムにつながる。ヤノマミは私たちが牛、羊といった人間に近い動物を食べることを嫌悪する。そのため伝導の宣教師たちは鶏を断念しなくてはならなかった(ヤノマミは鶏を好むため。ただし卵は別)。

P106-5両義的な存在・ジャガー

 ジャガーの伝承の特徴は人間が主人であり、ジャガーの裏をかく点である。現実のジャガーはそれと異なる存在である。夜集落を襲い、ときには昼間も襲い人々を恐ろしがらせる。人間のように狩りをおこなう、ずるがしこいジャガーにたいして嫉妬のような感情を持っているともいえる。

P107-4 kashahewa , Hoo

場合によって話の内容が異なる。村をおそったジャガーがあっさりとShidibashiという椰子の木でつくられたHimoという棍棒でやっつけられる。

P107-33SIROROMAの話

SHIROROMAというジャガーが村の女と交わり、妊娠させた。女の夫が大きな篝火を焚いて復讐する。ジャガーは焼けこげのできた毛皮を脱いで家に帰った。すると義理の父のジャガーが豚だとおもい、SIROROMAを食べてしまった。(ジャガーのカニバリズムのはじまり。ここではジャガーは人と同義)カニバリズムに味をしめたジャガーは男達が出払った村を襲い子どもを沢山殺し、連れ去った。生き残った子どもが男達に知らせ、シロアリの巣と赤唐辛子を混ぜて焚いた煙でジャガーの洞穴を燻してやっつけた。(この戦術はかつてスペイン人達の記録にある。)」

p110-20 亀の話

どうしようもない亀が、アマゾンの獣の王であるジャガーをうち負かす話

4 The Twins Omawa and Yoama(p111-6~p112-29)

OmawaYoamaの話はさまざまな形で語られている。片方は頭が良く美しく素晴らしいが、片方は間抜けで醜い。 この二人の正確は時にいれかわる。

「ある日Yoamaは川に住む怪物の美しい娘を見つけた。鳥に変身して誘惑して近づくが、手ひどく拒絶される。そこでOmawaが協力し、彼女を家に連れて帰った。彼らの従兄弟の白い猿が彼女を犯そうとした。しかし彼女のなかには、ピラニアが棲んでおり、彼の性器は噛み切られてしまった。Yoamaはピラニアを取り出して犯したが上手くいかない。そこでOmawaが方法を教え、それ以来人は上手な性交渉をもてるようになった。」

 

5、The Soul(p112-30~p114-21)

p112-30死後の魂

 ヤノマミの魂への概念は磨きがかかり洗練されている。人のBuhii(意志)はno boreboとなって上の層へあがっていく。一番上まで行くと、今度は分かれ道のある道を降りていく。Yaru(雷)の息子であるwadawadariwaが現世での生活態度を尋ねる。気前の良かったものはhedu(おだやかな現世とかわらない生活。)へ。ケチだったものはShobari Waka(火の場所)へ。

ただし彼らはこの話をあまり信じていない。「Wadawadariwaはバカだから嘘をつけばいい。」

死んだ子どもの魂はまだ無垢なので魂はno boreboにはならない。

P113-8迷子のbore

 目をらんらんと光らせ、ジャングルの中で拳や棒で人に攻撃してくる。シャグノンがカラカスにヤノマミの男をつれていったとき、車のライトを迷子のboreと勘違いしておびえた。

moamoは魂の重要な要素で、これをなくしたままだと人は死ぬ。シャーマンの呪術はこれを防ぎ、もとのように魂にもどすことが仕事。

P113-23人の片割れ(noreshi

 人にはそれぞれ片割れ(noreshi)がある。これは両義的意味((1)ジャングルの動物(2)肉体・精神の構成要素をあらわすもの)を持っている。”Lose moamo”のように”lose noreshi”ということもある。

 noreshiは同性の親から受け継ぐ。男は上のもの(ワシなどすぐれたもの)、女は下のもの(ヘビや土を掘るような動物、劣るもの)。カオババの場合は basho (黒いクモザル)で、よく「おれたちはbashoの一族だ」という。カオババの妻バヒミのnoreshihiima(犬)。このような考え方は日常生活にも現れる。(Ex,ハンモックは男の方が上につるす。)noreshiは人間のかたわれであるから、常に同じ行動をとる。

P113-45迷子のnoreshi

 彼らの考え方では、人とnorshiはあまり遠くはなれると不幸が起こる。(ハンターが自分のnoreshiを撃ってしまい、死んだこともあった。)魂がさまようことと病気は関係している。シャーマンは魂の敵と戦い、村に魂を戻すために、毎日何時間も小さな精霊hekuraを招霊する。

p114-12写真やテープレコーダー

写真をnoreshiといっておそれ、シャグノンが撮ろうとすると燃えさしの薪で殴ろうとしたが近年は慣れてきた。レコーダー(no uhudi)は恐怖の対象ではなく自分たちの声を楽しんでいた。

 

Endocannibalism(p114-22~p116-4)

p114-22cannibalismPRPTAIN SHORTAGEへの疑問

カニバリズムにはendocannibalism(内部の人を食べる)とexocannibalism(部外者の人を食べる)がある。どちらも全身を食べず、一部分のみ。

 HARNERHARRISといったProtein theory支持者は、アステカを例に挙げ、カニバリズムの原因を食糧不足とした。しかしこの行為の大半は宗教的・神秘的儀式なものである。儀式で戦士は自分の強敵の心臓を取り出し、血をすする。これは死者への尊敬を示し、死者の勇気をもらうためである。神食であるキリスト教の聖餐(イエス・キリストの血と肉をワインとパンで分かち合う)となんら変わらない。ヤノマミは決して人を食べない。死亡して火葬する際もその煙さえも嫌う。

P115-11葬儀の方法

 火葬後の灰をふるいにかけて、骨や歯を取り除き、このためにつくった丸太をくり貫いた器に入れる。近親の男、親しい友人で完全に砕く。器に残ったものはスープで洗い、髪を引き抜いて泣き叫ぶ人々で飲む。丸太は燃やす。皿は屋根の上におき、スープに入れて、親族、友人、その他に飲まれる。儀式は一般の人で一回。有力者などは複数回。子どもは両親だけでおこなう。

P115-33戦死者の葬儀

スープは女たちだけが飲む。すると復讐が達成されるまで、戦死者の魂は村にとどまる。

P115-41病死者の葬儀

伝染病などでおおくの人が死んだ場合。森の中で解体。骨を焼き、粉砕して飲む。

P115-45飼犬の葬儀

すぐれた狩猟犬などは火葬し、骨は食べずに葬る。ふつうの犬は生きたまま捨てられることもある。

 

Shamans and Hekura(p116-4~p119)

p116-4シャーマン

 ヤノマミのシャーマンは男だけである。精神世界を司り、病気を診断し、魔法を施し、魂と体の関係を維持につとめる。選ばれるのは名誉だが、なりたいと思えばだれでもなれる。いくつかのシャボノでは多くの男がシャーマンである。彼らはshabori hekuraと呼ばれる。Hekuraは人に似た無数の小さな精霊である。

P116-13シャーマン修行・禁欲と厳しい訓練

先輩シャーマンから教わりながら、絶食、禁欲生活。shami(汚れ)を取り除く。

・シャーマンの体はHekuraが喜んで住むような宇宙にならなければならない。

人間とHekuraの関係がよいと性交渉のときにHekuraは体から放れてくれる。

・シャグノンの考え・・・年長者が若者に厳しい修行禁欲生活を勧めるのは、村落内での性的な争いのタネを減らすためではないか?

P117-19精霊Hekura

Hekuraの男は頭wadoshe(ヤノマミもかぶる葉をぐるりと囲んだ輪)をかぶる。女は性器から棒が突き出ている。動物やnobadaboのような古い時代の人々からつけた名前あり。丘や木の上。岩や人の胸の上にある。

魂を刺したり殴ったりする武器を持っている。性質はhot(過激。好色)、naiiki(肉に飢え、人肉を食べる)、その両方の性質を持つものがある。シャーマンは敵の魂を食べさせるために彼らを送り込む。

P117-41幻覚剤

シャーマンはHekuraとコンタクトを取るために幻覚剤を用いる。(熟練者は少量で足りる。)美しくやわらかな歌声でHekuraを誘う。胸に彩色。Hekuraも幻覚剤(Braki aiamo uku)をもっている。何日もやっていても村人はそれなりに聞いている。話がそれたり、やるべきお決まりのジェスチャーがないと、横から茶々をいれる。伝承の断片だけが語られるが、みんなその話を全部知っている。しかし若者は時折やりすぎてひどい幻覚を見る。

 男たちはeboneを毎日常用するが近年は使用が少なくなってきた。騒々しく騒ぎ立てるため。また使用すると大量の緑色の鼻水がでる。

P118-24幻覚剤の社会的効果とその危険性

 男たちの日常のストレスを解放させる効果がある。幻覚状態の人はそれほど行動に責任をもつ必要がないとされ、そのために危険な状態になることも。(ex,普段はおだやかでも、意識朦朧で集落のなかで駆け回る、矢を射かける、鉈で斬りつけるふりをする)

シャグノンの考え・・・幻覚剤を常習し、その行為を許すのは、鬱屈した村落内での反目などを軽減させる効果があるのではないか。また義理の親子の関係が深まるといった親睦の面も。

 ハイになった人(waiteri)の扱い方=_注意深く見守る。_落ち着かせる。_人をおどかすのを止めさせる。

P119-1幻覚剤による事件

Kaobawaの北の方の村で殺人事件。幻覚状態の男が、普段から仲の悪かった人を殺す。このためこの村は長い間分裂した。シャグノン自身も調査の初めの頃、反目した相手に射られそうになったことがある。

まとめ

ヤノマミの宇宙観・秩序は現世とほとんど変わらない。彼らは死ぬとHEDUへ行き、現世とほとんどかわらない生活を送るのである。